やたらとテレビCMを見ましたね、この作品。
トラと漂流、途中で出くわす大自然の不思議、生命を賛美するような壮大なBGM。
なんかもう
ディズニー制作!、さもなきゃ
ハウス名作劇場!みたいな印象を受けたんですが、これを読んでるあなたはどう感じました?
僕は正直、首をひねりましたよ。
だって、
「ブロークバック・マウンテン」の監督だよ?
(ホモの濡れ場で賛否)
「ラスト、コーション」の監督だよ?
(ラブシーンの濃厚さにR-18指定)
(ちなみに、どちらも純文学を読んでいるような奥深い作品です)
なんか一時期の
チャン・イーモウみたいに商業路線にいってしまうのかと不安を胸に映画館へ向かいました。
結果的に、僕の心配は杞憂に終わりましたよ。
よかった。
ていうかねぇ、最近の映画のプロモーションは本当にひどいね。
この映画の場合も、取り込むべき層に対して
全然届いてないぜ、たぶん。
他にもこういうパターンってたくさんあるんだろうな・・。
で、いち視聴者の愚痴は置いといて、
「ライフ・オブ・パイ」ですよ。
ストーリーは、幼少時代の思い出から始まって、インドを離れ道中で遭難、最後助かるまでの一部始終を主人公パイが語る、というシンプルなもの。
奇をてらった展開にはならず、淡々と積み上げていく感じです。
この映画でも過去のアン・リー作品が持っていた
周囲に馴染みきれない主人公。
でも、どうしようもなく他者をもとめてしまう。
その欲求がどれだけ切実なものか。という、話の構造というか、テーマ性のようなものは健在だと思う(個人の感想です)。
ただ、「ブロークバック~」や「ラスト~」での
「人間の業」とでもいうべき迫力は「パイ」にはない。
まぁ、過去作よりも客の対象を広げたいという意図はあるのだろうね。
それでも、あのプロモーションは納得いかんけど。
テーマ表現のライト化に加えて、今回は映像が3Dになってます。
これも客を呼ぶための策かと思いきや、
そんなことない。
すばらしいです。絶対、これは3Dで見るべき。
とりあえず、トラが大迫力で飛び出してきたー、みたいな陳腐な演出ではなく、全体に対して
自然な立体感を得られるようなものになっていて、それが各シーンをより印象深いものにしてます。
嵐の激しさ、恐ろしさ。合わせ鏡のような凪の水面に映る神々しい朝日。そして何よりも
水中での映像がいい。
透明感、浮遊感の表現が絶妙です。
船が沈没する悲しいシーンなのに、美しさに見とれちゃいましたよ。
感想、以上。
IMAX3Dで¥2200はちょっと高いかもしれないが、
3Dで見る意義を持っている作品だと思う。
ぜひぜひ。
あ、あと音楽もインドテイストとオーケストレーションを非常にバランスよくミックスしたいい仕事をしてるんですが、
CMの曲は使われていなかった。
なんだったんだ、あれ。

Life of Pi [soundtrack]
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